桜物語2
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部屋に戻って、先程のことに呆然としていると、また土方さんだけが入って来た。
「……お前をここに連れてきてから、文を持ってくる女がいてな」
「!!」
俺に…?
真っ先に思いついた人は咲季さん。
咲希さん以外には考えていなかった。
「渡しておく」
中身は見てねぇからな。
そう言って土方さんは部屋から出ていった。
一言多いのは土方さん優しさか。
「……」
***晋哉へ
貴方が突然居なくなって心配しました。
新選組に捕まったと聞いた日から尚更です。
しかし、晋哉の事ですから何か理由があった事だと思っています。
私は元気に過ごしていますから心配せずに貴方のやりたい事を思う存分やってきてください。
返事はいりません。
ですから、いつか無事な姿を見せてくださいね?
無理をしない程度に頑張ってください。
追伸、一人で悩みを抱え込む事は、貴方だけではなく、周りの方も悩む事になりますよ。 咲季
「…咲季さん……」
何度も何度も読み返した。
そして気が付けば夕刻。
外は橙色に染まっていた。
「悩んでいても仕方がない、か」
いつでも後押ししてくれたのは咲季さんだったな…
「さて、…」
沖田さん、まだ目を覚ましてないかな…?
確かめたい。
逢いたい。
話したい。
もし、幼い頃に約束していた少年が沖田さんだったら?
謙人は忘れてもいいのか?
…謙人を忘れたら左之さんとはどうなる?
そういえば左之さん…俺に話があるとか言ってたっけ?
「…もういいや、」
逃げたいよ。
消えていなくなりたい。
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