桜物語
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「ねぇ、何読んでるの?」
「……」
「ねぇ」
「……」
「……」
「…何してるんですか」
「だって反応してくれない君が悪いんだよ」
「…………(はぁ…)」
机に向かいながら書物を読んでいると、余程暇なのか沖田さんは後ろから俺の書物を取り上げようと手を差し伸べてきた。
「沖田さん今は俺の監視役ですか?」
「違うよ、今の時間は隊士の稽古つけ…だったかな?」
「…………………………何してるんですか」
一番組組長がこんなので大丈夫なのか…?
「なんだ、総司もいるのか」
「あれ、左之さんもう帰「左之さんお帰りなさい!」……」
「あぁ」
左之さんとは、前に話を聞いてもらったときに"俺じゃ代わりにならねぇか…?"という言葉に甘えさせてもらった。
「見回り早くないですか?土方さんがいないからって今から永倉さん達と飲みに行こうだなんて考えないでくださいよ?」
近くに駆けよって話しかければ、自然に自分の口角が上がるのがわかった。
「誘いに来たのにそりゃねぇぜ」
「なに言ってるんですか?俺、許可なく新選組から出たら間違いなく斬られますよっ」
左之さんは"そういやそうだったな"と微笑んで返してきた。と、言うことはやはり飲みに行く気だったようだ。
「…晋哉、行くよ」
「え?」
「君は僕の小姓でしょ」
沖田さんは常時ニコニコしていたが突然人が変わったように不機嫌になった。
「部屋から出てもいいんですか…?」
「それは土方さんが千鶴ちゃんを小姓として扱う気がないから、部屋に閉じこめているだけだよ」
沖田さんは"早く行くよ"と言って部屋の外に立っていた左之さんの隣を通りすぎた。
置いていかれては道がわからなくなってしまうので、仕方なく沖田さんの背中を追いかけた。
「……わかりやすいやつ」
後ろで左之さんが苦笑して見ていることも知らずに。
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