桜物語

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竹刀がぶつかる音が響き渡った。
稽古をしていた隊士達は、身の危険を感じたためか端に移動していた。
周りのざわめきは一気に静まりかえる。




「へぇ」




沖田さんの顔に笑顔が見られた。
周りがあっけにとられている間もただ竹刀を奮うだけ




「…」




沖田さんの肩に竹刀の先が向かう…だがそれは髪の毛に触れただけで、ギリギリ交わされてしまった。




「やるね」



「……ありがとうございます。」




空気は徐々に殺気だったものになっていった。




「…」




素早く懐に入り込み横に凪いだ。
しかし、沖田さんはそれを受け止め、そのまま流して打ち込もうとした。




「…っ、」



「すばしっこいよね」




間一髪のところでギリギリかわした。
そして、




パアン!




「……っ!」



「…」




俺が横に振った竹刀は沖田さんの顔の横ギリギリの場所で受け止められてしまう。




(……すごい。こんな空気は久々だ。)




殺気

沖田さんが本気になり始めたようだ。




「あいつ…、組長と対等に戦っているぞ…?」




どこからかそんな声がしていた。

竹刀のぶつかる音が何度も響く




「…」



「…」




無言。いつの間にか沖田さんから笑みは消えていた。




「総司のやつ手加減なしだな。」



「いや、手加減できねぇんだろうな」



「晋哉…」




いつの間にか左之さんと永倉さん、そしてなぜか千鶴が見ていた。

騒いでいた隊士たちは夢中で見入っているのか、誰も何も話していない。

竹刀がぶつかる音だけが堪えず響いている。

そして長時間続いくと思われた試合に、俺も沖田さんも息が切れてきた頃

バキッ!

「「!!!」」

強く打ち合った2人の竹刀は同時に真っ二つに割れた。




「しゅ、終了です!!!!」


終了の声と同時に、一気に道場内が騒がしくなった。





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