桜物語

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「(ここ数日で気分的に凄く疲れ気がする…)」




厨での一件以来、沖田さんにあまり部屋から出るなと言われた。

食事や昼間も今まで通りに自室でとるようになった。




「晋哉、土方さんが呼んでる」




藤堂さんに連れられてきた部屋には、既に沖田さんと千鶴が同席していた。




「お前らに外出許可をくれてやる」



「いいんですか…!?」




ようやく綱道さんを探しに行けると言うことに喜んでいた千鶴に土方さんは渋い表情のまま続けた。




「市中を巡察する隊士に同行しろ。
隊を束ねる組長には必ず従え」



「はい!」



「…」




外出許可か…

咲季さん…




「総司、平助。今日の巡察はお前らの隊だったな」



「なるほどねー…。だから当番のオレらが呼ばれたってわけか」




藤堂さんは納得したように呟いた後、少し眉を寄せた。




「でも、オレたち八番組は夜だから、ついていくなら昼の一番組の方がいいんじゃねーの?」




藤堂さんはチラリと沖田さんに視線を移した。




「浪士に絡まれても見捨てるけど、いい?」



「いいわけねぇだろ。
何のために任せると思ってんだ」




土方さんは軽口を叩く沖田さんを叱り付けた。

そして、土方さんは真剣な表情で俺達に向き直った。




「…長州の連中が不穏な動きを見せている。
本来なら、お前らを外に出せる時期じゃない」



「どうして…そんな時期に私達に外出許可をくれるんですか…?」




千鶴は首を傾げて尋ねた。




「…京の町で綱道さんを見たって言う証言もあがってきている」



「父様を!?」



「あぁ。…それに、半年近くも辛抱させたしな。
これ以上、機械を見送り続けたんじゃあ、綱道さん探しも進まねぇだろ」




千鶴の思いは以外にも土方さんに届いていたようだ。




「とにかく、俺は許可を出してやる。
行くか行かないかは、お前らの好きにしろ」



「…私、行きたいです…!行かせて下さい!」




千鶴は迷うことなく判断した。

土方さんは少し微笑むと俺に視線を移した。




「俺は遠慮しときます」



「えっ!?
晋哉は行かないの…?」



「あぁ。特に用事もないしな」




咲季さんには会いたいけど、町の端の方だから恐らく巡察の範囲には入らないだろうからな




「総司、雪村を頼んだぞ」



「はいはい。それじゃあ、もう戻っていいですか?」



「あぁ。」




土方さんがこたえたのを確認すると、沖田さん達が立ち上がったのを見て俺と千鶴も部屋を出ようとした。




「…新崎、お前は残れ」



「…?」




…何かしただろうか…?










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