Game Short
□宿敵が倒せなかった
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「だぁああああああっ……」
数学の教師、コーン先生が教室を出てドアを閉める音が響いた途端、トウコは思わず固い机に頭を打ち付けた。
机と接吻しても何も面白いことは起こらず、消しゴムの粕が唇と鼻にへばり付いた。
もう一度だけ頬をつねったがやはり夢ではない。
56回目のため息をついていると後ろからクスクスと笑い声と「おいトウコ」という憎たらしい声。
「何よ」
「お前何点だった?まっ、どうせ赤点なんだろ?」
そう言いながら後ろの住人トウヤは69と赤で書かれたテスト用紙を見せつけてくる。
「ぐっ…トウヤ、いつのまにそんなに実力をつけたの…!?」
驚きの目で答案を見る。
実は左右逆じゃないかと思うが、それだったら余計に信じがたい点数になってしまうのでその考えは真っ先に消去した。
「お前がテスト前なのにバトルしてる時」
「じっ、実技の練習してたの!!…それに、バトルのテストはあたしが1位だったからねーっだ!!」
そう言って思いっきりトウヤに舌を出す。
モンスターボールに入っている私の相棒は私と同じように舌を出した。
それをみたトウヤはおもしろくなさそうに舌うちをした。勿論、トウヤのポケモンも。
「まっ…、これから頑張れよ、19点」
ニヤニヤ笑われながら「じゃっ」と爽やかに言われたが、トウヤが席を立った途端にあの男が座っていた椅子を蹴飛ばした。
「次はあんたがそうなるんだからねー!!!」
叫びながらトウコは誓った。
次はあの鬼畜に勝ってみせる。
そう言って勝ったためしがないのだから私は駄目な女だ。
「トウコー!」
不意に聞きなれたソプラノが聞こえたので蹴飛ばした椅子は放置してペチペチ歩いてくる親友を抱きしめた。
どうせ何を聞きにきたかなんて分かりきっている。
ベルの髪の毛からするシャンプーの香りは全てを忘れさせてくれる気がしたが、現実は厳しい。
「…19点」
そう耳元でぼそりと呟くとベルは一瞬硬直したが、「まぁ実技のバトルは1位だったんでしょ?おめでとう!」と励ましてくれた。
「えへへ…。ていうか、ベルはどうだったの数学は?」
そう言うとベルは見て見てとでもいう様に忌まわしい白い紙を押しつけてきた。
「68点!!今回は頑張ったよー!」
「うわー…トウヤもベルもいつの間に勉強したんだよぉ…」
「トウコがテスト前なのにバトルばっかしてるからいけないんだよー」
ベルはそう喋りながらトウコの量の多い髪の毛を軽く引っ張る。
地味に痛くておっさんの喘ぎ声の様な声を出してしまった。
「もうさー!!なんで数学なんてあるの!??いいじゃんバトルだけで!!!バトルが大事だよ!!!」
そう叫んでいると、「そんなことあるわけないよ」と後ろから声が。
「…この…ドN!!!、数式野郎!!!」
「数式をそんなふうに言うのは許しがたいね。バトルにだって数式は活用できるさ。今回キミが勝てたのは偶然であって、次の実技の1位は僕が貰うからね」
そう言いつつ、100と書かれた数学のプリントと、「僕は実技2位だったんだ」という宣言をされて勝ってに喋って勝手に消えた。
後姿を全力の目力で睨む。消えてしまえ、あの長身真緑数式男。
「あいつさ…だから彼女も友達もできないんだよ」
「や…やめたげてよぉ!…、まぁそうなんだけど……」
さらっとベルも酷いことを言う。
だから彼女は天然の悪魔なんだ。
「でしょ。あっ、ていうかチェレンは?」
そういい周りを見渡すと、前方でシャーペンをガリガリ動かしているメガネの姿を発見した。
「チェレンは間違えた問題の復習してるんだよ。真面目だよね〜…」
「全くだ。でもチェレンは良い点数だったでしょ?」
ベルはチェレンの後ろの席だから答えもとっくにきいているはず。
ベルはふわりと笑って、
「94って言ってたかな〜、相変わらず凄いよね!!クラス2位だよ」
万年2位も可哀相なものだなぁと、心の中で呟いたが、1問2点で3問しか間違えていないのに、どうしてそこまで復習する必要があるのかと疑問に思う。
だがガリ勉はそんなこと当たり前なんだと勝手に理解をして、ベルの方を向いた。
ベルは熱心に勉強するチェレンの姿を見て頬を赤く染めている。恋する乙女は可愛すぎる。
「隙ありっ!!」
そう言ってベルの柔らかい頬をつねる。
弾力は相変わらずだ。
「いだいいいい!!ドウゴぉ、いだいよぉ゛!!」
「ごっ、ごめん!」
ベルの死神のような声に思わず手を離すと、別の意味で顔が赤い彼女が居たのでこれであのガリ勉が調子に乗らなくて済むと安心した。
「まったチェレンに見とれちゃって〜…、かわいいなぁ!!」
「そっ…そんな大きな声で言っちゃ駄目ぇ!!」
そう言ってベルは私の口を塞ぐ。チェレンは気付いていないような素振りでシャーペンを動かしているが、シャープペンシルの芯が何回も折れているのがバレバレだ。
「トウコだってトウヤのこと好きな癖に〜」
「はぁ?好きじゃないわよ。あんな冷めた草食系。あたしはもっと肉食系の方が好きなの!!!」
「(そんなに否定しちゃってなぁ…)……じゃあトウヤにもっとトウコがっつり食べなさいって言っとくね。やったねトウコ。」
「なっ、ちょっ!!!」
ベルの語尾に感情がこもっていない。声色に恐怖を抱きながらベルの胸倉を掴む。だが彼女には通じない。
「それを励みに補習、がんばってね!!」
「えっ…補習…ああああああっ!!!」
そんなことすっかり忘れてた。
これから始まるコーン先生の悪魔の補習。笑顔でチョーク投げられるという伝説は永遠に不滅だ。
「じゃあ、私は皆を誘ってバトルでもしようかな!!!」
「ええええっ!!!ずるい、ずるい!!私もバトルしたい!!!」
「ダメ〜、勉強が大事。学生の基本だよー!!」
そう言って彼女は私を机に戻す。
その時丁度トウヤも戻ってきて倒れている椅子と私を見た。
それを見たベルはあらあらと近所のおばさんの様に言って自分の席に戻った。
「お前だろ、やったの」
トウヤは大きなため息をつきながら倒れた椅子を元に戻す。
「お前って誰ですか、あたしの名前お前っていう名前じゃないんですけどー」
「トウコ、」
不覚にも一瞬ときめいてしまった私は末期だろう。
熱くなる顔を必死に抑えた。
「なっ…何?」
「馬鹿」
「はぁっ!?なんなのいきなり!!名前呼んで馬鹿とか!!」
ちょっと期待したのが本当に馬鹿だ。
「補習頑張れ」
「69点なら手伝いなさいよ」
「嫌だね、俺は溜まってたバトルをするんだよ」
「ダメ!!補習付き合って!!!」
「可愛くねだってみて。ま、出来ないだろうけど」
「なっ…そうやって人を小馬鹿にして!!」
目薬をさしてチークをつけてトウヤの目をみる。
そうして『可愛くねだって』やれば、彼は顔を赤くしながら手伝ってくれるんだろう。
アンタが惚れた女だから今日はその優しさを存分に利用してやろうと企てた。
「っあー、もう分かったから。分かった」
「えっへん、私だってねぇこういうことできちゃうんですよ」
っていうことで手伝ってねぇーと言えばシャーペンを全力で投げられたので全力で回避した。
宿敵が倒せなかった
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意味不明^q^