Game Short
□今、幸せだから
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ライモンシティ、午後2時。観覧車前。
自分の周りから賑やかな声、視界には沢山の人、そんな状況の中トウヤは一人立っていた。
キンモクセイが花を咲かせ、心地良い香りが鼻腔を擽る。だがそんなことよりも心臓の鼓動がより一層トウヤの平常心を崩していた。
今日はトウコとのデート。
付き合って長くなるけれどまだデートもしたこと無かったんだなぁと思いトウコを誘った。
そう言った瞬間にトウコが泣きだしたから慌てて理由を聞いたら僕に愛想を尽かされたんだと思っていた、なんて言われてしまったから今日は思いっきり彼女を楽しませてあげたい。なんて張り切っていたけれど、正直女の子とデートなんてしたことないし、頼れる友人もベルとチェレンしか居ないし役立たずだったし。本当に不安だらけだ。
トウコとの出会いはスーパーマルチで相手が居なかったトウヤに声を掛けてきたという、小さなことだった。
ポケモン解放、Nとの別れ。多くのトラウマがまだ鮮明に自分の体に刻まれていた時で、今になっては何をしたかったのか分からなかったけれどポケモンを乱獲しては逃がし、バトル、バトルの毎日だったのを見た彼女は自分の頬を力いっぱい叩いた後に泣いていた。
バトルサブウェイで狂ったようにそんなことをしていたトウヤにビンタを食らわせたトウコ。
「いつも…いつも、そんな辛そうな顔でバトルしないでよ…ッ。」
そう言って抱きついてきた彼女の腕の力は弱弱しかった。
それまではバトルサブウェイで偶然出会ったら一緒にバトルをしていたが、以来彼女は毎日僕に会いに来た。
それから自分のことを話した。
プラズマ団のこと、Nのこと、自分が英雄だったということ。ゼクロムも見せた。
もうトウコは近付いてこないと思った。英雄なんてのは実際に傍に居れば近寄りがたく、存在してほしくないものだから。僕も彼女にこれ以上自分の領域に踏み込んでほしくなかった。本当に隠したいことは僕が汚い人間だったことで、それを英雄という名声で消していた。「僕は英雄なんだ、この世界を救った」そう言った後数秒トウコの顔を見つめた。彼女の瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。
「僕のこと、嫌になったでしょ。もう僕に近づくのやめなよ。」
吐き捨てるようにそう言った。
だけどトウコは大きくため息をついて、僕の隣にいたゼクロムを優しく撫でた。
「トウヤことさぁ、そうやって自分が傷つかないように、傷つかないようにって守るの止めたら?……私なら、受け止めてあげるから、もっと頼りなよ。ううん、頼ってほしいの。私はトウヤほど強くないけど、出来ることはあるから。」
「…ほんとにさぁ、後悔するよ」
「そんだったら今一緒にマルチ乗ったりしない。…それに私ね」
****
「トウヤぁあああああああ!!ごめん!遅くなった…」
あまりの大声に意識はライモンへと戻された。前を見ればいつもとは違う可愛い服装をしたその子。うっすらメイクもしていて、慣れないことしてるんだなぁと自分の為に尽くしてくれていることが嬉しくて思わず顔がにやける。
「いいよいいよ、それよりもトウコ可愛い」
そう言ってトウコを引き寄せてぎゅーっと効果音がする位に強く抱きしめれば。歳に似合わない咳をされたので慌てて話す。
「トウヤだって格好いいよ…。ていうか、格好よすぎ!!!」
「はいはい」
「だーっ、もうトウヤの顔直視できない!!!」
「そんなこと言ってると今からサブウェイ行ってスーパーシングル放り込む。僕だって恥ずかしいんだからさぁ」
「えっ…」
トウコの顔が赤くなるのを見たら自分まで恥ずかしくなってしまって帽子を下に下げようと思ったら今日は帽子を被ってなかったことに後悔。じょうがなくトウコの手をぐいっと引っ張り強引に遊園地の人混みから抜け出す。
歩いている時にトウコが僕の横に並んできて掴んでいた手首をほどいて僕の手に彼女の手
を重ねてきた。握られる僕の右手はしっとりとしていて何処か熱かった。
「ねぇトウヤ、さっき考え事してたでしょ」
「あー…。うん」
「何のこと考えてたのー?」
不意に聞かれた質問。
トウコのことだよ、というのは若干抵抗があったので小さく見えるバトルサブウェイを指差した。
「次のマルチでノボリさんとクダリさんにギャフンと言わせる方法」
「嘘つけ」
「はい、嘘です」
「トウヤは嘘つくの下手だよねー。で、本当は?」
やっぱりトウコにはいつも見抜かれてしまう。それほど長く一緒にいる訳でも無いのに、読唇術でも習得しているのだろうかと疑問になるが、胸の中で考えていることだから当然のように違うよなぁと一人コントをした。
「…トウコのことだよ、トウコに告白された時のこと」
そう言えばトウコはうっすら笑って、
「あの時の私、尊敬するでしょ。あんな重たい雰囲気でトウヤに好きですーって言っちゃったんだもん。」
「流石に僕も予想もしてなかった。」
「でもいいって言ったじゃん。もしかしてあの返事は流れで言っちゃったの???」
「多分違うな。」
「えーっ、じゃあ何?」
「それは秘密、ほら。最初はミュージカルだから早く入らないといい席取れない」
あの時からトウコは僕の光だった。
大きな闇に捕らわれて動けなくなってしまった僕をトウコはあっという間に光に変えていた。きっと先に好きになったのは僕の方で、認めたくなくて冷たい態度をとっていたんだと思った。
「今のトウヤの顔、すっごく輝いてる。」
不意に彼女が笑った。
「トウコのおかげだよ。」
再びトウコを抱きしめた。
風に乗って香るキンモクセイはどこか優しい感じがした。
背中に回された手の体温をゆっくり感じていた。
****
トウトウ!!!トウトウの日!!…2日過ぎてるけどトウトウ大好きよ!!!
ってことでデート話のっけてみましたけど大してデートしてない…。((汗
トウヤが主人公ポジションでNを倒した後に自分も病んじゃってバトルサブウェイに入り浸り廃人化からのトウコまじオカンというお話でした☆((
遅れちゃったけどトウトウの日おめでトウ!
もっとトウトウが増えますように…><