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□眠り姫は・・・・・
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とある宿の一室。

ベッドとソファ、テーブルとクローゼットと簡素な家具だけが置かれたこの薄暗い部屋に、1人がソファにて足を伸ばし眠りに堕ちていた。

頭は横に向け、お腹に開いた本、その上に手をのせている。
どうやら読書中に眠ってしまったようだ。

すやすやと眠る少女の部屋に、空いた窓から来客が。

それはとても小さな来客、小さな黒い蝶だった。

黒い蝶は近くに飛んでいき彼女の周りでひらひらと飛び回る。
まるで、一緒に遊びたいとおねだりをしている様に。
そこへ、

「ティーズ。」

窓からの新たな来客、黒の紳士服をまとい黒のシルクハットを被った男性だった。その者の一声に彼女の周りを飛んでた黒い蝶、もといティーズは来客の元へ飛んでいく。
来客は窓の淵に片足と手を起き、ティーズに向けて口元に人差し指を立てる。

所謂、『静かに』とのメッセージだった。

「窓開けながら寝るとか、無防備すぎだろ。」

そう言いながら来訪者-ティキ・ミック卿は窓を閉じ、カーテンを閉める。
気付けばそこにもうティーズは存在せず、この部屋にはティキと彼女の2人だけ。
ティキはソファに近づき眠る愛しき少女の頭を優しく撫でる。

「龍華・・・・・。」

それはまるで、恋人に触れる様に優しく儚い姿だった。
ティキは龍華の頭を撫でていた手を徐々に下げ、彼女の頬に滑らせる。

「ん・・・。」

そうすれば彼女は微かに反応し、体をくねらせる。
そんな彼女を見てティキはクスリと微笑む。
本当はこのままキスを落とし、起こしたいところだが、あまりの彼女の純粋さ故にその衝動を抑える。
ティキはその場に跪き、少女もとい龍華の手を両手で優しくかつ強く握り締める。

そして、呟く。

「愛してる・・・永遠に・・・・・。」

そして、ティキは元来た場所に歩き、窓から出ていった。
勿論、窓を閉めるのを忘れず。








翌日、眠り姫の近くの机には白い薔薇とトランプのスペードのAが一枚置かれていた。


(ティキ・・・?)
(白い薔薇とトランプ・・・ふふっ、あの人らしい。)

END
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