NOVELU
□アネモネ(3)
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『この親不孝、姉不幸モノォ――――っ!』
…キラはすかさず耳から携帯を遠ざけた。
「だから、ごめんって、カガリ。仕事が忙しすぎて帰れなかったんだよ」
サイと話した翌日、仕事の空き時間にカガリの携帯に電話をしてみたら、見事に予想通りの反応が返ってきた。
あまりに思ったとおりだったので、可笑しくて吹き出してしまいそうになるのを、キラは懸命に堪えた。
『いくら忙しいといっても、盆、暮れ、正月!いずれかは帰ってこれるだろうが!―――』
直接話してたら、とっくに頭に平手を一発は食らっていただろうと思う。
『私は、毎年帰ってるんだぞ!?』
「えらい!カガリ、さすがカガリ!」
『おちょくるなぁっ!』
…すっかり頭に血が上りきっているカガリを落ちつかせようと、キラは無理やりに彼女が食いつきそうな話題を振ってみた。
「ところでさ、カガリ…、アスラン…今付き合ってる人いないよ?」
『えっ!?………』
明らかにカガリの声のトーンがあがった。
「チャンスだとおもうんだけどな〜取り持とうかなー、どーしようかなー…」
好感触に気を良くしながら、キラはあくまで空々しく悩んでみせる。
『わっ…私は別に、アスランのことなんてっ、もう………!』
「あ、そ。じゃあいいや」
戸惑いという名の沈黙が降りてきた。
携帯越しに、モジモジと顔を赤らめるカガリが見えるようで、キラは含み笑いを浮かべながら
「いままではなかなかタイミングがあわなかったよねー2人のフリー期間が……せっかく今回は…」
駄目押しの言葉を繋げた。
『…何が言いたい?キラ………』
「別に?言葉通りだよ」
キラは白々しく答えた。
『……何の用事があったんだ?』
彼の狙い通りにカガリが餌に食い付いてきた。
やっぱり好きなんじゃないか、とすかさず突っ込みたかったが、カガリが意固地になることは明らかだったのでここは我慢と、出掛かった言葉をグッと飲み込んだ。
キラは、あくまで冷静に見せるために、気付かれないようにこっそりと深呼吸をした。