NOVELU

□アネモネ(4)
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4)


大通りから脇道に入り、しばらく歩くと、車では通れない幅狭な道に変化する。そこを5分ほど進むと、十字架を掲げた白い建物が見えてくる。

隠れ家のようなここが今のラクスの職場であり、住居だった。

都心からは少し離れているとはいえ、主要なベッドタウンである地域に、これだけ草や木がうっそうと生い茂る場所も今では珍しいのではないかと、ラクスは思う。


空を覆うくらいに枝を伸ばした木々には、ブランコや滑り台などの遊具が取り付けられ、片付け忘れたシャベルが点在していた。

ラクスは微笑を漏らすと、それらを拾い集め、少しお小言を言わなければなりませんわね、と1人ごちた。



「あ、シスタークライン!お帰りなさい!!」
「今ちょうど午後のお昼寝が終わったところだよ!」

ラクスが教会の横にある建物に入ると、めざとく彼女の姿を見つけた子供達がパジャマ姿で駆け寄ってきた。

「そうですか。良く眠れましたか?―――お着替えをしたら、今日のおやつを出しましょうね」



「はーい」


ラクスの言葉に気を良くした子供達は、張り切って自分の布団を畳み始めた。



「シスターラミアス、ただいま帰りました」

「あら、シスタークラインお帰りなさい―――あ、あなたに渡すものがあるのよ!ちょっと待ってて」

ラクスよりも少し年長のシスターが、廊下の向こうから明るく笑いかけた。




彼女はラクスがこの教会に入る前から勤めている先輩シスターで、教会に設置されている、この孤児院の経営を主に担当している。

ラクスをここに誘ってくれたのも彼女だった。
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