NOVELU

□桜守(3)
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3)

学力はそこそこ高く、校内の治安も問題なく、校風はのびのび―という、理想の高校、それが「自由高校」だった。

生徒は、何故か殆どが街の人間だった。

県立という事でもちろん街の外から通う生徒もいるのだが、およそ各学年の1/3程度だ。


そのせいだろう、クラスでも顔見知り同志が和気あいあいと話をし、緊張とは縁遠い生徒が殆どだった。




そんな中、知り合いが1人もいないキラは、席が窓際であることをいいことに、ボーっと景色を眺めていた。

実は、そんな憂いを含んだ(と、見られていた)彼の姿に、心をときめかし、噂をする女生徒が多数いたのだが、キラは全く気付いていなかった。



ぐるりと端から端まで視線を動かしても、『逢瀬の桜』は見えない。

ひょっとしたら、と思っていたキラは少々落胆した。




「君が、キラ・ヤマト君か」

よく通る、耳に心地よい声に振り向くと、藍色の髪をした碧の瞳の少年が、微かに目を笑わせてキラを見下ろしていた。

「そう、だけど?」

「俺は、アスラン・ザラ。この街の人間だ。君の事はラクスから聞いて知っている」


”ラクス?”

キラは思わず眉根を寄せた。


”年上を呼び捨てにするほど、彼らは親しいのだろうか?”

疑問が頭をよぎる。



アスランは即座にその雰囲気を察したようで、

「ああ…俺は”桜守”の一族の一員だから…ラクスとは親戚にあたるんだ」

と説明してから、キラの横の席に腰を下ろして苦笑した。

「直系ではないけどね」



「”桜守”?直系?」

耳慣れない言葉に、キラが首を傾げると、アスランは”紙はあるか?”とキラの手元を見て胸ポケットからペンを取り出した。
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