NOVELU
□桜守(4)
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次の日、アスランに会っても、彼は”桜守”に関しては、一切触れなかった。
逆に”聞いてくれるな”という雰囲気を漂わせていたのでキラから聞くのも憚られ、なんとなくその話題からは遠ざけられた。
しかし何かと面倒見の良いアスランは、どこか抜けたところのあるキラを放ってはおけず、いつの間にか、いつも一緒に行動をするようになっていた。
昔から学業においても、スポーツにおいてもパーフェクトに近かった彼は、”桜守”の一員という事実も手伝い、一歩おかれて接せられる事が多かったため、対等に接してくるキラの存在が新鮮だったし、何より嬉しかったのだ。
キラも昔から何においてもソツなくこなしてきたから、特にアスランへの劣等感もなく、気楽に付き合えたし、なにより、なにくれと世話を焼いてくれる彼をとても好ましく思っていた。
魅力的な少年が2人一緒にいることで、女生徒が五月蝿い難点があったが皮肉にもアスランの身分が自分らを高みの存在に押し上げ、直接ちょっかいを出される事はあまりなかった。
キラは写真部に入り、好きなときにカメラを弄れる自由を満喫していた。
あれから、枯れ桜の近くには寄っていないし、ラクスの姿を見かけることは会っても、話すことはなかった。
彼女の秘密を探りたいと思ってはいたが、やんわりと釘を刺された身では動きにくいし、余計なことをして嫌われるのも辛かった。
「コンクール…ですか?」
写真部の部長――サイ・アーガイルがもってきた一枚の紙を見て、キラは思わず声をあげた。
「でも、僕まだ2週間前に入部したばかりで…新入生は基本的に見送りじゃなかったでしたっけ?」
「いや、君の作品をみせてもらったけど、すごい良い物をもっているし――君ならチャンレンジしてもいいんじゃないかと思う。部長判断だよ。」
サイは呆気にとられているキラの肩を掴む。
「風景と人物の2つのコースからどちらか1つを選んで。締め切りは4月中だから」
またもや、キラは目を丸くする。
「あと、半月しかありませんよ!?」
「うん、ゴメン」
ガックリと肩を落とすキラに、サイは、悪びれずに微笑み、こそっと耳元に囁く。
「賞金、でるよ?―――最優秀には100万円」
項垂れたキラの耳に響く魅惑的な言葉…
100、万円…
1人暮らしの身には有難すぎる金額…!
「部長…!」
「うんうん」
キラの生き生きと光る瞳を見て、サイは満足そうに頷いた。