NOVELU
□桜守(6)
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6)
ザザッ…―――
庭のほうから、葉の擦れる音がする。
吹き上げる風に――また、桜の花が散る。
「前、世…?」
キラは訝しげに、双眸を細めてシンを見た。
何を世迷いごとを、と口に笑いを浮かべようとするが、自分の最近の体験がそれを押し留める。
自分達とそっくりな姿の者たちのビジョン……
シンが変わりにクスっと笑いを零した。
「気が違ってるとか、そういうんじゃないよ?――信じられないだろうけど、これは本当のこと」
「いや…」
キラはかぶりを振る。
「信じる…信じるしか、ないよ」
キラはシンの目をまっすぐに見据えると、覚悟を決めた眼差しを向けた。
「話して、君たちが知っていること…全部」
僕は、何を聞いても揺らがないから――ラクスを想う、この心を頼りに。
シンはラクスへ視線を向ける。
ラクスはキラを巻き込むことを、酷く嫌がっていた。
彼女が意識の無い間にキラへ全てを話してしまうことを躊躇うが、もう時間がなかった。
大事な腹違いの姉のために、彼女との約束を破る。
”ごめんな、姉ちゃん……”
キラに向き直ると、シンはゆっくりと口を開いた―――『枯れ桜』を遠くに見つめながら。