企画部屋
□仲良きことは…
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『仲良きことは…』
(「君のために」の後日談〜クリスマス・バージョン??〜)
「ねえ、ラクスー」
鼻にかかった、まだ少年の面影を残す甘い声。
彼女がこの声と、上目がちのおねだり目線に弱いということを熟知していての攻撃だ。
「なんですかー?キラ…」
けれども、今日、3学期に向けての下準備で忙しい彼女は、ノートパソコンに顔を向けたままでベッドに寝転がる彼を見向きもしない。
「折角の週末なんだからさ、ゆっくりしようよー……」
キラは口を尖らせ、枕を抱えながら左右にゴロゴロと転がった。
これでもキラは大学生。
高校時代は、学校始まって以来の優秀な生徒会長としてその名を轟かせていたのだ。
在学中に教師として赴任してきたラクスと恋に落ち、すったもんだの末に仲睦まじい恋人関係へと落ち着いた。
キラが高校を卒業するまでは2人の関係を隠し通していたが、今となっては堂々と街を歩いている。
時々知り合いに会っては、信じられないものを見るような眼差しで見られたり、『うえええぇぇ―――!?』と、奇声を発せられたりするが、本人達は全く気にしていなかった。
まさに”お互いしか見えない”状態で、何かというと引っ付きあっていたのだ。
キラが高校を卒業してから、はや9ヶ月。
キラは大学入学と共に1人暮らしを始めたが、何かと忙しく、ラクスはラクスで相変わらず「娘命!」な父親の下、自宅から職場である自由学園まで通っているので、週末くらいしか2人でゆっくりできる時間はないのだ。
早く2人で甘い雰囲気の中、いちゃいちゃしたいと望むのはあたりまえのことだろう、とキラは表情を険しくし、心を鬼にすることにした。
「ラークス?毎回言ってるけど、僕の家に仕事を持ち込むのは禁止だよ」
少々怒り気味のキラの声にラクスはさすがに顔をあげてキラのほうを振り返った。
「でも、キラ……これを終わらせないと来週のク…クリ……」
「栗?」
首を傾げるキラに、ラクスはゴクリと喉を鳴らした。
「クリスマスの日、ゆっくりしたいので……早く仕事を片付けてしまおうと……」
「ラクス……?」
キラの胸はじーんと熱くなり、思わず目頭を押さえた。
「僕たちのため…だったんだね…ラクス……」
感動のあまり、今にも抱きついてきそうな体制のキラの目の前に、ラクスがぴらっと、紙をかざす。