NOVELU

□アネモネ(最終章)
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次の日の早朝、ラクスはレオンを起こすと、手早く着替えさせた。



―――キラはまた、ここに来るだろう。

そうしたら今度こそレオンの存在に気付いてしまうかもしれない。





レオンが産まれたとき、夫は赤子に、自分に似た要素が何かないか必死で探したが、1つも見つからなかった。

何より、髪の色が、実の父が誰なのかを如実に語っており、彼は絶望した。


だが、もうはじめから誰の子なんてことは明らかだった―――夫とはもうしばらく、そういった行為はしていなかったのだから。

でも、産みたかった。
キラの子だと分かっていたから、なおさら。

理由をつけて、夫とはあまり近寄らないようにし、なんとか無事に出産できるまで誤魔化し続けた。


出産後は夫からレオンを守るため、ラクスは子供は里子に出したと偽り、密かに実家とカガリの協力を得て彼を必死で育て続けた。
夫の暴力がエスカレートして計らずも離婚が叶った後、教会に移るときにレオンも”孤児の1人”として一緒に連れてきたのだった。

レオンには自分が母であることを明かしているが、父のことは何も教えていない――また、念ため、外部の人間には自分がラクスの子であることを言ってはいけないと、堅く言って聞かせていた。



―――私にはレオンが居れば良い

ラクスは苦しい胸の内を隠すように、我が子をきつく抱きしめ、父親譲りの鳶色の髪を愛しそうに撫でると、御礼とお詫びを記した置手紙を置いて、朝もやの中、密かに出立した。
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