NOVELU
□アネモネ(最終章)
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「母様」
ラクスはハッと我が子に気付くと、自分が酷く醜い顔をしていなかったかとかぶりを振った。
「なんですか?レオン」
出来るだけ、表情を穏やかに答えた。
「あの、一昨日僕を助けてくれたお兄さんが…僕の本当の父様なの?」
レオンは目を輝かせながら、ラクスを見あげる。
期待に満ちた綺麗な、無垢な瞳。
ラクスは眩しさに、目を細めた。
――――キラと自分の子供が此処に在る……自分達が離れていた7年の間、すくすくと、健やかに育った、大切な命が。
私達は、本当はいつでも、繋がっていたのだ。
気恥ずかしさと共に、真実を語れる喜びが心を満たし、自分とキラを引き裂いた元夫への怒りにさらわれそうになった自分を癒してくれる。
「……そう、ですよ、レオン……あの人が貴方のお父様です」
レオンは顔を花開いたかのように、パアっと輝かせた。
「嬉しいな…っ!僕、お兄さんが大好きだもの…!」
「レオンは、キラが…お父様が大好きですか?」
「うん!」
アスランとカガリは母子の語らいをじっと見守っていたが、レオンが最後に大きく頷いたところで、お互いに顔を見合わせ密かにガッツポーズを決めた。
「結論が出たようね?」
シスターラミアスが、ドアを開けて、静かに入ってきた。
「シスターラミアス…私………」
ラミアスは手でラクスの言葉を制し、静かに首を振った。
「いいのです…貴女は幸せにならなくては……レオンのためにも」
「シスター……」
「それと、キラさんに謝っておいてくださいな。先日彼と話をした時に、意地悪を言ってしまいましたから……彼の心を見極めるために」
ラミアスは、いたずらっ子のように微笑むと、
「彼も貴女も、こんどこそ幸せになれます……主のご加護と共に」
と、十字を切った。
「ありがとうございます……これからも、祈りにきます…こちらに」
ラクスはラミアスの手をとり、そっと自らの額に押し当てた。
ラミアスは、ふふ、と微笑み「彼と、レオンと一緒にね?待っているわ」と、手を重ねた。