NOVELU
□knocking on the door (2)
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ドサッ!…
鞄をベッドの上に放り出すと、自らもそこに倒れこむように身を投げ出した。
「はぁ…疲れた」
身体の芯から絞り出すように呟かれた言葉。
―――今日は笑顔を何回作っただろう?
キラは身体を回転させて仰向けになると、自らの頬に両手で触れ、そこをマッサージをするように手を動かした。
『キラって性格良いよな!』
『キラ君って優しいよねー』
『キラ君、大好き!』
いつもいつも当たり前のように投げかけられる言葉。
周囲に溢れる笑顔・笑顔・笑顔…
―――っ!!
キラは一瞬その端正な顔を苦痛に歪ませ、ベッドから起き上がると、戸棚の上のほうにある小箱を手に取った。
ダイヤル式の鍵を開けて、そこから煙草を一本取り出すと、隣においてあるライターで火をつける。
窓を少しあけて、けだるそうに、窓枠に寄りかかった。
「ふう…」
胸一杯に煙を吸い、口から吐き出すと、罪悪感と同時に、爽快感も押し寄せた。
エターナル学園に編入するときにきっぱり止めたはずが、ここのところ日に日に吸う本数が多くなっているように感じる。
母親にいつまた見つかるかわからないし、止めれるものならば止めたいのだが、欲求を上手くコントロールが出来ない。
もうすぐ母が仕事から帰ってくる時間であることを思い出し、あと一吸いして消そうかと、思い切りまた煙を吸う――と、脳裏にふと、今日のラクス・クラインの顔が浮かんだ。
なんとなく彼女の存在は自分を苛つかせる。
他人に無関心であるはずの彼は、人を好きになる事も無ければ、めったに嫌いになることもなかった。
なぜ、ラクス・クラインの存在が自分を落ち着かせなくなるのか、自分でも原因はわからず、今日もそれを探ろうと試みたのだが……結局分からなかった。
勉強が自分よりも出来るとか、先生の信頼が厚いから、とかそういった嫉妬の類ではない。
もともとキラは他人との比較に興味は無いのだ。
考えれば考えるほど、ますますイライラは増し、気がつけばあと一吸い、のはずだった煙草は白い部分が殆ど無くなっていた。
『やば…』
慌ててキラは携帯灰皿に吸いかけをいれると、ハンガーに掛けてあるブルゾンのポケットにしまい、窓をより大きく開いて換気に努めた。
―――後で外に吸殻を捨てに行って…歯も磨かなくちゃだし、制服も外に干して……ああ、めんどくさい
吸うと面倒が増えるのはわかっているのに、毎回同じ事を繰り返す自分にキラは呪いの言葉を吐いた。