NOVELU
□knocking on the door (2)
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シンを化学室へ送った帰り道。
教室に戻ろうとするラクスは視界の端に見覚えのある鳶色を見た気がした。
――――あれは…
廊下の端を向こうから歩いてくる人物は、先日中庭で見かけたキラ・ヤマトではないか?
授業を受けるためにすでにメガネをかけていたラクスは今度こそ彼の顔がはっきりと見えた。
触り心地の良さそうな鳶色の髪に、繊細さを備えた端正な顔つき…あれでは女性に騒がれるはずだろう。
ただそこに立っているだけで絵になる人物だ。
「?」
だが、ラクスは彼に強い違和感を感じ、知らず、眉間にしわを寄せる。
珍しく1人で歩いているキラは、特に暗い顔をしているのではないのだが、なぜか強烈な孤独を感じるのだ。
心の闇、ともいえる、孤独。
あんなに周囲から好かれている人物に……どうしてだろう?と、自分の勘を疑うが、元来ラクスはこういう洞察には優れていた。
――――そして、キラの虚ろな瞳が、ラクスに気付き、途端に不快さと警戒の色を示したとき―――ラクスの疑念は確信に変わった。
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