NOVELU
□knocking on the door (最終章)
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「2−Bのルナマリア・ホークが、風邪で倒れました」
シホが会長室にいるラクスにそう告げたのは、最終練習直前のことだった。
ラクスは、交流会の進行の詰めの作業をしているところだった。
「…彼女の役は?」
「妖精です」
ラクスは、顎に手を当て考え込む。
「…代わりが出来そうな人はいますか?」
「いえ…皆、持ち役で一杯一杯で…裏方に回っているのは大抵男子生徒ですし…」
「…そうですか……」
「クラインさんがやればいいんじゃない?」
いきなり背後から聞こえてきた第三者の声にラクスとシホが振り返ると、ドアに寄りかかったキラがニッコリと微笑んでいた。
「冗談は休み休み仰ってくださいな―――」
ラクスが息を吐き前へ向き直ると、シホの期待に満ちた視線とかちあった。
「まさか―――」
ラクスは青ざめた。
「クラインさんは脚本にしっかり目を通しているし、台詞も完璧でしょ?…練習もこっそりいつも見ていたし」
しれっと事実を暴露するキラに、ラクスは唖然とする……
――この人は、なぜそんなことを知っているのだろう―――?
「もともとの雰囲気がぴったりだし、はまり役だと思うよ?」
「―――私も、同感です、会長」
キラとシホは目配せし、ニンマリと笑った。
「あなたたち……」
窓からの風が、ラクスの髪を弄びながら吹き過ぎていった。