NOVELU
□knocking on the door (最終章)
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ラクスがシホとキラに連れられて練習会場に姿を現すと、にわかに緊張が走った。
彼らに促され、気まずそうにラクスが皆の前に立ち
「私が、ルナマリアさんの代役を務めさせていただきす」
頭を下げると、一斉に驚きの声があがった。
―――私がいると、折角出来た皆さんの和を乱してしまいますわ…
ラクスがクラクラとする頭を右手で支えると、そっと後ろから両肩に触れる手があった。
「大丈夫―――クラインさんなら、出来るよ」
肩に手を置いたまま、キラが耳元で囁いてきたので思わずラクスは顔を赤らめる。
「なぜ…そう言いきれるのですか?」
「君は、誰よりも陰で努力をしているし―――誰よりもこの劇を大事にしているから…皆、そのことをもう、良くわかってるよ」
「でも、…」
「見てみて」
キラが顎で示した方を見ると、皆すでに台本の読み合わせや、装置の設置など各々の役割を果たすべく働いている。
「君の、人形に対する愛情を感じて―――みんなそれに応えなきゃって思ってるんだよ」
「あ…の…」
おずおずと、2人の下級生がラクスの近くに寄ってきた。
「妖精のところ…あわせておきませんか?」
と、ぎこちないながらも笑顔で話しかけてくる。
ラクスは驚きに目を見張り、思わずキラを振り返った。
そこにあるのは、優しく細められた綺麗な紫の瞳。
かつて感じられた不快感や警戒の色はすでになく―――代わりにラクスに対する深い思いやりの色が見て取れた。
「行っておいで」
トン、と軽く肩を押されると、ゆっくりとラクスは輪に加わる。
彼女のために開けられた”場所”へ。