NOVELU
□桜守(1)
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白く透き通る肌に、風に舞う桜色の髪、青空のような蒼い瞳―――それは、まさに桜の化身と言っても良いくらい、美しい少女だった。
今までに会ったことが無いほどの。
風に弄ばれる彼女の髪は、周囲に散る花びらと同化して、美しく中空を舞うかの如く少年の瞳に映った。
その光景に、少年は息を飲み、激しく鼓動が高鳴るのを感じた。
「桜の、精…?」
少年は思わず声に出して呟いてしまった。
越してきて間もないこの少年は、この街に伝わる「桜の精」という存在をまだ知らず、単純に彼女の容姿から連想されるものとして言ったものだった。
ところが少年の言葉に、それまでに穏やかだった彼女の顔が険しさを帯びる。
「違いますわ!……私は、”桜の精”ではありません!」
怒気を含んだ口調で言葉を吐くと、少女はくるりと身体を回転させて、桜の木の後ろへ消えた。
「え…?ちょ……!?」
少年は呆気にとられた。
なぜ少女を怒らせてしまったのか理解が出来ず、理由を聞こうと追いかけるが、もう少女の姿は何処にも見当たらない。
一瞬で煙の如く、消えてしまったかのように、何処にも。