NOVELU
□桜守(1)
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「なんなんだよ…」
誰にともなく不満の言葉を吐くと、枯れ桜の木に手をついた。
その瞬間、触れた掌から体全体に激しい感情が流れ込み、耐え切れずに、少年はその場にうずくまった。
『何、これ……』
悲しさ、怒り…そういった負の感情が彼を揺さぶり、翻弄する。
頭が割れそうに痛み、胸が張り裂けそうに苦しい。
胸を押さえ、目を固く瞑りそれに必死で耐える。
「すぐに、桜から手を離すんだ!」
何処からか聞こえてきたその声に従い、手を離せば、一気に感情の流入は収まり、少年は脱力して倒れこんだ。
倒れる瞬間、駆け寄る黒髪に紅い瞳の少年の姿が見えた……。
「大丈夫か!?」
黒髪の少年は倒れている少年を助け起こすと、急いで首すじに指をあて、脈を確かめてほっと息をついた。
「君、は…?」
「俺は、シン――シン・アスカだ」
「僕はキラ・ヤマト……なんだったの?今のは?」
キラは、苦しげに顔を歪め、呼吸を整えながら、シンの腕を、強く掴んだ。