NOVELU
□桜守(2)
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「姉ちゃん、入って良い?」
軽いノックと同時に、シンはそのままドアを開ける。
「シン…了解の返事を待ってから開けてくださいな」
どこか、気の無い返事が返ってきた。
声の主、ラクスは机に向かったまま、シンには背をむけた格好で、何かを熱心に読み耽っている。
机には分厚い資料が何冊も積み上げられていた。
自分にはとうてい我慢が出来ない代物と、シンはウンザリしつつ、声を掛けた。
「何やってんの?姉ちゃん?」
そこでやっとラクスは顔を上げてシンの方を振り向いた。
「いえ…ちょっと、今日、気になったことがあったものですから」
「紫の瞳?」
ラクスは顔を強張らせてシンの紅い瞳を見返した。
「なぜ、それを?」
「俺も会ったからだよ…今日」
ラクスの蒼い瞳が見開かれて、シンに話の続きを促している。
「”桜の精”って言ったのは他意はないみたいだよ?……単純に姉ちゃんが綺麗だから、そう言ったみたい」
ラクスの頬はたちまち赤くなる。
「シ…シン!」
シンは内心、大きく溜息をついた。
『まったく…これで高3だってんだから、初心だよなー…』