NOVELU

□桜守(2)
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ラクスもおかしくは思っていた。

かれは街の人間の匂いがしなかったし、今”桜の精”を、余所者が知っていることはあまり無いだろう。
しかも彼くらいの若者ならばまず知らないのが普通だ。
冷静に考えれば考えるほど、カッとなってしまった自分を深く反省していた。



やはり、そうだったのか、という思いと同時に、激しい後悔が襲ってくる。

「そう、ですか…私、悪い事をしてしまいました。謝らなければいけません…でも…」


連絡先も知らない、と顎に指を当てて、顔を俯かせたとたんに、救いの神の声がした。

「大丈夫」

「シン?」

「彼…明日、自由高校に入学してくるよ」



ページを押さえていた指が外れ、バサバサと大きく音を立てて、分厚い書物が閉じる。

「同じ学校に…」




予感がする。


何か、自分を変えてしまうような――そんな出来事が起こる予感が。



”ザアッ…”


にわかに、庭の桜がその枝を大きく振るわせた。

ラクスに、自らに触れよ、とそう訴えかける。



しかし、その時の彼女はその勇気が無かった。





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