NOVELU

□桜守(3)
2ページ/9ページ



サラサラと白い紙にペン先が走り、簡単な家系図が描かれていった。

キラは熱心にアスランの手元を見ている。


「”桜守”の起源は1000年以上も前に遡るんだ。お前も見た『逢瀬の桜』のある邸宅に住んでいるのが”桜守”直系の一族。今はクライン家がその当主になっている。ラクスはそこの長女で、シンが長男…2人姉弟だ。」

”当主”という文字に丸がつけられて、クラインの家族の名が記される。


「俺は、先々代から枝分かれしたこのザラ家の家の者だ」

今の当主の祖父の妹の嫁ぎ先が”ザラ家”のようで、アスランは紙にそう記す。


「ま、年のころも近いし割りに近所にいるし、で小さい頃からあの姉弟とは良く遊んでいたから、よく知ってるんだけどな」


キラは時折頷きながら、意識を集中させて図に見入っていたが、ふと疑問が頭に浮かんだ。

「でも、シンの苗字が違うのはなんで?」

アスランは少々言い辛そうに、顔を歪める。


「シンは死んだ母親方の苗字を名乗っているからな」


「死んだ?」キラの目が剣呑さを帯び、細まる。


「病死、だ。ラクスの母も早くに亡くなっている」

キラは顔を上げて、アスランの瞳を真っ直ぐに見た――紫の瞳は驚きに揺れている。


「あまり言いたくはないんだが」と、前置きをしてから周囲に目を配り、誰も聞いていない事を確認してからアスランは声を潜めた。

「”桜守”の直系一族は、なぜか女性に短命が多いんだ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ