NOVELU
□桜守(3)
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サラサラと白い紙にペン先が走り、簡単な家系図が描かれていった。
キラは熱心にアスランの手元を見ている。
「”桜守”の起源は1000年以上も前に遡るんだ。お前も見た『逢瀬の桜』のある邸宅に住んでいるのが”桜守”直系の一族。今はクライン家がその当主になっている。ラクスはそこの長女で、シンが長男…2人姉弟だ。」
”当主”という文字に丸がつけられて、クラインの家族の名が記される。
「俺は、先々代から枝分かれしたこのザラ家の家の者だ」
今の当主の祖父の妹の嫁ぎ先が”ザラ家”のようで、アスランは紙にそう記す。
「ま、年のころも近いし割りに近所にいるし、で小さい頃からあの姉弟とは良く遊んでいたから、よく知ってるんだけどな」
キラは時折頷きながら、意識を集中させて図に見入っていたが、ふと疑問が頭に浮かんだ。
「でも、シンの苗字が違うのはなんで?」
アスランは少々言い辛そうに、顔を歪める。
「シンは死んだ母親方の苗字を名乗っているからな」
「死んだ?」キラの目が剣呑さを帯び、細まる。
「病死、だ。ラクスの母も早くに亡くなっている」
キラは顔を上げて、アスランの瞳を真っ直ぐに見た――紫の瞳は驚きに揺れている。
「あまり言いたくはないんだが」と、前置きをしてから周囲に目を配り、誰も聞いていない事を確認してからアスランは声を潜めた。
「”桜守”の直系一族は、なぜか女性に短命が多いんだ」