NOVELU

□桜守(5)
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「もう、駄目だ……限界…」

再びラクスを寝かせた後、シンは崩れ落ち、頭を抱え込む。



「シン…先輩はどうしたの――何か悪い病気、とか……」

深く落ち込むシンの様子に、キラは背筋がぞっとするような悪寒を感じる。
彼女に何かあって、自分が平静で居られるとはとても思えなかった。

シンはぼんやりと顔をあげて、キラを見た……


沈痛な面持ち

紫の瞳は不安に揺らいでいる



”姉ちゃんが、ほんとに心配なんだな…この人”

シンは大きく息をついた。



迷いはあるが、仕方がない…
”ごめん、姉ちゃん……俺やっぱり姉ちゃんが苦しむのは耐えられないよ……”




「シン?」

呼びかけるキラを一瞥したシンは、1人の若い使用人を呼び『人払いを』と言い付けた。



キラはずっと、彼の姿を目で追い、再び自分の前に座るまで、無言で待った。



「あんたが、姉ちゃんをここへ……俺らの部屋がある別宅へ運んできたのは運が良かった」

それは全く、偶然のことで…撮影をしていた『逢瀬の桜』はクライン家の庭にあることは知っていたから、適当に入れる場所を探して中に入り、たまたま行き着いたのが、ここの玄関だったのだ。


「本宅の……ばーさまがいる方へ運んでいたら、きっと、今頃あんた、囲まれて身動きできなくなってたよ」

シンはいかにも嫌そうに、苦々しく笑った。


相手方へよほどの反感をもっているのだろう、と容易く推測できるほどの歪みを感じる表情――
紅い瞳が苦しそうに揺れていた。


「何の、こと…?」

キラは紫の瞳を歪めて、わけが分からないという表情を浮かべて様々な考えを巡らす。

そんな彼の様子に、シンは天井を仰ぎ見て、軽く息をついた。
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