NOVELU

□桜守(6)
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―――遥か昔から、【桜守】一族は、この地を守る守護者として、大衆の尊敬を集め、富を蓄え――栄華を極めていた。

中でも「桜」からお告げを受ける役割を担う能力を持つ【桜の精】は、土地の巫女的役割を担っており、常日頃神殿に篭り、人々の悩みを解決し、洪水を予測し、飢饉を予知し…流行り病の流行を予知し、様々な災厄を退ける役割をしていた。

ここら辺一帯は四方を山に囲まれた奥地で、閉鎖的な土地であるが故に【桜守】のお告げは、桜の木を媒介にした貴重な「神の声」であり、必要不可欠なものだったのだ。

その評判は国にも届くようになるが、不思議なことに【桜の精】の能力は【桜守】の庭にある大木の桜2本が感知できる範囲に限られていた。


遥か昔、【桜】との契約で、そういうことになったという。

それは、その類稀な能力を人々を守るためにのみ使い、決して金儲けなどの俗なことに使用しないための、予防線であったのだ。
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