NOVELU

□桜守(6)
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『あ…桜が、優しいので』

『桜の気持ちが分かるの?!――すごいや!』


純粋な心を持った、綺麗な紫の瞳をした青年……

少女はすぐに恋に落ち、青年も彼女の清廉な美しさと優しさに触れ――想いを深めていったという。


人目を忍び、桜の下でこっそりと会うたびに深まる彼らの想い

いけないと思いながらも会わないと居られない狂おしい想い



彼らはある日、とうとう一線を越えてしまった。



それから【桜の精】としての、彼女の能力は日を追って弱まり、ついには全く無くなってしまった。



一族は慌てふためき、運の悪いことには、その年はかんばつで、農作物がまったく育たない――

一族が血眼で原因を探るうちに、少女と絵描きの青年の仲が知られることになった。


全てが【桜の精】たるこの少女と、絵描きの青年の所為になり、彼らの仲は当然引き裂かれた。



少女と青年は嘆き悲しむが、彼らが会わなくなっても少女の能力が回復することは無く、土地は枯れていくばかりだった。



彼らが禁を破ったが故、【桜】がお怒りになったのだ、と村の衆は考え、彼らを生贄として差し出せと、【桜守】の一族へ迫った。


掌を返したような村人の態度に戸惑いつつも、騒ぎを収める為と一族の繁栄のため―――【桜守】一族は意を決し―――【桜の精】を「桜」への生贄として差し出すことにしたのである。


【桜の精】である少女は交換条件を出した。

自分の命を差し出す代わりに、相手の青年の命は助けてくれと。


その条件は承諾され、青年は村を出て行くことを条件に解放された。
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