NOVELU
□桜守(最終章)
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「お…っお前は!なんということをしてくれたのだ!」
「このまま呪縛が解けなかったらどうしてくれる!?」
口々にキラとラクスを逃がしたシンを罵る老人達一族重鎮。
シンは胡坐をかいたまま、しれっとそっぽを向いたままだ。
アスランとカガリが彼を守るように、傍らに付き添い睨みをきかせている。
「今すぐに、2人を探して連れて来い!」
声を荒げ、叫ぶ男を鋭い目つきで威嚇すると、シンははっきりと言い捨てた。
「お断りします」
「なっ…!」
怒りに震える老人達に嘲笑を浮かべると、その赤い瞳を憤怒で燃やした。
「あんた達は!―――自分達のことしか考えてないのかよ!…姉ちゃんは自分が犠牲になって呪縛を取り去ろうとして…キラさんはそんな姉ちゃんを必死で助けようとしているのに…!――他の方法を考えようともしないで……!
なんて身勝手なんだ!あんた達は!」
「シン……!」
ばーさま、と呼ばれる人物が怒りに目を吊り上げ、彼に迫ったとき
「もう、お止めください!――――母上」
廊下から現れたグレーの髪の男が一喝し、その場の人物、全員の動きが止まった。
皆の前に現れたのは、ここ数ヶ月、姿を消していたシーゲル・クライン…【桜守】当主、その人だった。
「父さん―――」
「シーゲル……!お前、いままで何処に……!」
口ひげを蓄えた人物――シーゲル・クラインは、息荒く、髪を振り乱しながら周囲を見渡した。
「ラクスは――ラクスはどこです!?」
いち早く我に返ったカガリが外を指しながら苦々しく答えた。
「ラクスなら、さっき――出て行ったぞ……体、弱ってんのに、ばーさまたちが追い詰める真似、するから……伯父さんこそ、ラクスたち置いて、どこ行ってたんだよ!!」
ジワジワとこみ上げる涙を堪えながら叫ぶカガリの肩をそっと抱くと、アスランはシーゲルに顔を向けた。
「シーゲルさん…もしかして、何か、分かったんですか?」
その言葉に、シーゲルはアスランへ顔を向けると、ツカツカと足早に歩み寄ってきた。
「―――ラクスを早く見つけてくれ……!私達は、まったくの思い違いをしていたんだ!」
鬼気迫る表情の――普段は温厚な伯父に、ただならぬ事態を察知したアスランはカガリとシンに向き直る。
「キラとラクスを――探すぞ」