NOVELU
□日常風景
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キラに先導されて庭園内を歩くイザークは、見覚えのある白い薔薇に目を留める―――”ホワイトシンフォニー”……。
歌姫としてのラクスの、かねてからのファンであったイザークは、あれと同じ名のホールで開かれた公演も観に行った。
あの花に思い入れの深い彼女は、プラントの新しい住居となったここでも、庭の最も目立つ位置に植えた。
しかし、まさか、あのおっとりとした―ある意味世間離れした彼女が議長になるなど、当時の彼には、全く想像が出来なかった。
そして、彼女の恋人が自分と同じ軍服を着て、こうして共に歩くことなども。
感慨に浸りそうな気分を引き締めようと、イザークはまっすぐに引き結んでいた口を開いた。
「しかし、議長が支度に手間取るなど、珍しいな」
ラクスはいつも時間にきっちりとしていて、イザークが迎えに来る時間にはすでに準備が完了しているのが常だ。
なんらかの反応を求めてキラの様子を伺えば、俯き加減にモゴモゴと口ごもっている。
「なんだ?……どうした?」
キラの不自然な様子に、表情を曇らせたイザークは、足を速めて、彼の横に並んだ。
気の所為か少し頬が赤らんでいるようだ…?
「いや…あの、ラクスが寝坊したの、僕の所為だから―――イザーク、叱らないであげてね?」
「は?」
ますます、首の傾斜と眉間の皺を深くするイザークに、キラは照れた様子で、ちら、と彼を見ると、
「昨晩、張り切りすぎちゃって」
と、頭を掻いた。