NOVELU

□白を纏うシリーズ
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君は気付いているのだろうか

君が僕を見るときに、時折悲壮な色をその蒼穹の瞳に浮かべることを





「私という存在は、貴方に戦いを強いてしまう――」
君はポツリと、僕の隣で呟いた。


ベッドで力尽き崩れ落ちた後、君は僕が眠っていると思ったようで、僕の背中にそっと掌で触れた後、小さく、小さく…嘆くように、呟いた。


本当に馬鹿だね、君は、と振り向いて抱きしめたかったけれども、あまりに君が悲しそうに泣くものだから、それすら出来ずに、僕は黙って背を丸くした。


かつて僕はこの制服を着た者たちと戦い、多くの命を奪ってしまった。
そのときの僕の正義が、そうさせた。


君と出会い、数度の別れと再会を繰り返し、やはり君だけは手放せないと――一番君が大切なのだと悟ったとき、僕は君のために生きようと誓った。


だから、君と歩いていくために、僕はこの制服を着たんだ。



すべては君を守るために―――



君が苦しむことは無い。

全て僕が選んだことなのだから


君を守り、君を幸せにすること、そして――君の隣で生きることこそが、僕の望み、願いなのだから。


だから君は僕の隣で微笑んでいて。


君がいるからこそ、僕はこの世界を愛しいと思えるのだから。


だから、

だからこそ


いつまでも、一緒に、歩いていこう、ラクス。





1)『白を纏う』






「議長執務室だが」


銀色の髪をまっすぐに切りそろえた白服の軍人――イザーク・ジュールが不在のラクスに代わって内線をとった。


「――あれ?イザーク?」


緊張とは程遠いトーンのこの声


「ラクスは?――どこか出かけてるの?」

受話器の向こうでコメカミをヒクつかせている人物がいると、知ってかしらずか、飄々と話し続けるこの男は――

イザークとしては認めたくはないが、クライン議長の最愛の恋人――キラ・ヤマトだ。


「ラクスに伝えて欲しいことがあるんだけど」


「議長と呼ばんか!貴様はァァァァ!!!」


せめてもの反撃に思い切り受話器に向かって叫んだ。
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