企画部屋
□愛情(最終章)
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「クライン様が到着されましたら、美容室のほうへお通しするようにと、上から言い付かっております」
チェックインが済んだ後、フロントで告げられ、二人は顔を見合わせた。
「美容室――ですって?」
「こちらでございます」
いぶかしむラクスを、1人の女性従業員が、直通のエレベーターへと誘導した。
キラも一緒にというので2人で中に入れば、見事な赤い、オフショルダーのドレスがハンガーにかけられていた。
「綺麗ですわ……」
「シーゲル様がラクスにと、手配しておかれたのですよ」
いきなり背後から聞こえた声にラクスが振り向くと、そこには今年、若くしてこのホテルの支配人になったラクスの従兄のレイが立っていた。
「レイ!」
「やあ、ラクス―――綺麗になったね」
喜び駆け寄るラクスを抱きとめると、彼の見事な金髪の長髪が揺れた。
レイは、ラクスの頬に親愛のキスをすると、優しく彼女の髪を梳く――
非常に絵になる様子に、キラは一瞬嫉妬めいた感情を覚えた。
「5年ぶりくらいになるかな?―――あの小さかったラクスが恋人を連れてここを訪れるなんて……感無量だよ」
キラを”恋人”と言ってもらえたことで、ラクスは胸が躍り、頬にほんのりと赤みが差し、首を微かに頷かせた。
一見冷たそうに見える、切れ長の瞳を優しく細めて、レイはラクスからキラへ視線を移した。
「――キラ・ヤマトさん、ですね?」
「はい」
キラが深く一礼すると、レイも会釈を返した。
「いつもラクスがお世話になっております…当ホテルへのご滞在、お楽しみください――。では、また後ほど」
秘書と思われる女性に促されながら、レイは美容室を後にした。