PRESENT NOVEL
□A True Heart(1)
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春になると、妙に落ち着かない気分になる。
心がざわざわと動き出す。
進級、卒業、入社…さまざまな変化が起こる季節ではあるが、僕の場合はそれだけではない。
―――春色の彼女を思い出すから。
『A True heart』
「キラ!」
双子の姉であるカガリの弾んだ声が、背後から聞こえた。
振り向くと、彼女特有の…太陽のような明るい笑顔でこちらにかけてくる。
(廊下は走っちゃいけないんだけど…)
心でつぶやくが、言ったところでなんの効果もないので、そのまま飲み込んだ。
「何?カガリ」
「アスランとラクスの帰国の日が決まったって!」
「え?」
ドクン!と大きくひとつ心臓が跳ねた。
「今、日誌を置きに職員室に行ったんだけど、そう教頭が言ってたんだよ。来月だってさ!嬉しいなぁー」
「うん…そうだね」
僕は心の動揺を気取られないように、精一杯の笑顔を浮かべて頷いた。
「もう3年半になるんだよな…中2の秋だよな、あいつらが交換留学に出たのって」
「…カガリ、大泣きしてたよね」
うるさい!と顔を赤らめる彼女をそのままに、僕の思考は急速に過去に遡っていく。
桜の木、やけに晴れた空、涙を浮かべる君…そして………
初めて重ねた人肌の…気の遠くなりそうなくらいの心地よさ。