PRESENT NOVEL
□A True Heart(2)
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A True Heart(2)
1)
「来月にアスラン君とラクスちゃんが帰ってくるそうよ!」
家に着くなり、母さんが玄関に飛び出してきた。
「うん、知ってる。今日、カガリから聞いたよ」
「なーによー!せっかくあんたが喜ぶかと思ったのに…もうー」
口を軽く尖らせて『残念だわ…』と漏らしながらキッチンに引っ込んで行ったが
「あ!」
と、いきなり振り返った。
「な…なに!?」
「アスラン君のお母さんは一緒に日本に戻ってくるみたいだけど、ラクスちゃんのお父さんはフランスにそのまま残るそうよ…だからラクスちゃんは高校を卒業したらまた、フランスに戻るのかも知れないわね…」
「……そう、かもね」
「アスラン君のお父さんは泣いて喜ぶわねー。やっと愚痴を聞かされないですむわ、うふふー」
「うん…」
僕は生返事をして、部屋に向かった。
「ラクスちゃんはしばらく1人暮らしになっちゃうから、家に来てもらおうかとも思ったんだけど」
ガタンッと、思わず階段を踏み外してしまった。
「やあねー、大丈夫?キラ」
「か…母さん、本気?」
「ええ、だって最近物騒でしょ?女の子…それもラクスちゃん可愛いから1人暮らしなんて、母さん心配で心配で」
「………」
「あ、もちろん、ラクスちゃんが良いと言えば、だけどね…って、キラは反対なの?」
何も答えない僕を不思議がって、こちらを伺ってきた。
「ううん…僕はどっちでもいいよ」
薄く笑い、自分の部屋に入った。
「はあー…疲れた」
乱暴にベッドに体を投げ出し、天井を見つめた。
(アスランも帰ってくるんだから、アスランの家に行くんじゃないのかな…むしろ)
あれから、2人がどうしていたのか、僕にはさっぱりわからない。
カガリはよくメールを交換していたようだったが、僕のほうは一切交信を絶っていたから。
(結局、臆病なんだよね…僕は)
『私は…卑怯なんです…キラに、触れる資格もなくて……』
あのとき泣きながら言ったラクスの言葉を僕は時折思い出す。
あの言葉が呪縛になって、僕は一歩も踏み出せない。後ろにも、戻れない。
僕の気持ちは3年以上経った今も、あのときのままだった。