BSR(short)

色の無い世界
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愛する者を失った世界は何色になるのだろう。


薄れていく意識の中、そんなことを考えていた。


全てが色を失って、白と黒だけの世界になるか。


それとも、今までと変わらずに色のある世界が残るのか。


どちらにしても色褪せて見えてしまうのだろう。



「あかい、はな……」



潜むように咲いている赤い花に手を伸ばす。


しかし、わずか数センチの距離で届かない。


もどかしい距離が、俺達と同じだと思った。


目を開けていることすら億劫に感じ、その目を閉ざす。






このまま、永遠の眠りにつければいいのに。












「……さ……様!」



ほの暗い闇の中に声が響いた。


俺を呼んでいる?



「……ま……ね様!」



うるせぇ。
眠らせていてくれ。


俺はもう……



「政宗様、真田が……」



真田が?
幸村がなんだ小十郎。


信じられないほど重い瞼を開ける。


えらく眩しい。



再び瞼を閉じ、しばらくしてまた開く。


それを何度か繰り返せば目が慣れてきた。



「政宗様!」


「小十郎……幸村が、なんだ?」


「……聞こえていたんですね」


「あぁ」



続きを促せば、小十郎は僅かに目を伏せた。


こいつの、こんな表情は見たことがない。

よほど悪い知らせか。



「……死にました」


「…………だれが」



分かってはいたが、あえて聞いた。


小十郎は眉を顰め、今度は濁すこともなく言い放つ。










「真田源二郎幸村は、死にました」



 
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