BSR(short)
□散る椿
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赤が似合う人だった。
旦那は赤が似合うね。
何気なく呟いた言葉に照れ臭そうに笑い、旦那は「そうか」と一言。
ほんのり染まった赤い頬を隠すように茶を啜る。
あぁ、もう本当に可愛い。
ほんわかとした気持ちで佐助も茶を啜った。
赤が似合う人だった。
任務帰りに大きな花弁を付けた椿の花を持ち帰った。
旦那へのお土産として。
観光に行ったわけではないからこんなものしか持ち帰れなかったけど。
ごめんねと茶目っ気たっぷりに言う。
すると旦那は椿の花を手に取って、お前が無事に帰っただけで十分だと笑った。
あぁ、幸せだな。
俺様は忍なのに、こんなにも身を案じてくれる。
赤が似合う人、だった……
いくら似合うからって、全身を赤く染めなくてもいいよ。
地面に力無く倒れている幸村を抱き抱え、佐助は言った。
軽く揺する。
しかし幸村は起きない。
今度はもっと強く、名を呼びながら揺すった。
しかし、やはりぴくりとも動くことはない。
「大将、大将……風邪引くぜ?こんなとこで寝たら……」
ほら、こんなに冷たい。
はやく起きないと、起こさないと。
「大将、たい……だん…旦那、旦那、だんな……ゆき、むらっ!」
譫言のように名を呼ぶ。
あんなに温かかった体温が感じられない。
あぁ、散ってしまったのか。
虚空を見つめ、佐助は呟いた。
〜 散 る 椿 〜