dragon tiger
□悲しい現実
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体内時計が朝を告げる。
いつもはとても気持ち良く目覚められるのに、今日はやけに体が重くて起き上がれない。
いやしかし、早く起きなければ弁当と朝練が。
いざ、と体に力を入れると、もそりと何かが動いた。
パチリと目を開き、何かが動いた方向を見る。
「ひぎ……ぴぎゃぁぁ!!?」
何か……それは、美しという
言葉がよく似合う隻眼の美青年だった。
「…………う、ん……もう少し寝かせろ」
ガッシリと体を押さえ込まれ、幸村はあわあわともがく。
「ま、政宗殿!なぜ貴殿がここにいるのでござるか!」
「仕方ねぇだろ。部屋に戻ると小十郎がうるせぇんだ」
小十郎とは政宗の右腕……ならぬ右目的存在の側近だ。
政宗の足りないところは彼が
補っていると言っていい。
部屋に戻れない=鬼の形相の小十郎と仕事が待っているといったところか。
「ご責務から逃げるのは勝手でござるが、某はこれから学校なので起床しまする!」
早くどいてくだされ、と政宗を引きはがしにかかるも、幸村よりも政宗の方が力が強いために徒労に終わった。
「政宗殿ぉ〜、朝練に遅刻してしまいます!」
「遅刻くらい、いいだろ」
「まったくよくありませぬ!……それに弁当も作る時間がなくなるでござる」
まだまだ育ち盛りな幸村。
お昼ご飯抜きはきつい。
この気持ち、同じ男子ならわかってくれるはず。
じいっと政宗を見つめる。
「……しるか」
しかし、政宗は鬼だった。