幼なじみと×××

□幼なじみは婚約者
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それは、近い昔の約束。



「大きくなったら、ゆきは俺のお嫁さんね」


お菓子のオマケで付いてきた指輪を左手の薬指にはめてやる。

赤い宝石のレプリカが光に反射して、まるで本物みたいに見えた。


「まーくんのオヨメサンになったら、いつもいっしょにいられますか」

「当たり前だろ。ずっといっしょだ」

「はい!」











「ん…ゆめ……?」


随分と懐かしい。

あれは、まだ小学校に上がる前のこと。

お菓子のオマケで付いてきたおもちゃの指輪を婚約指輪に見立てて、約束した。

ずっと一緒だと。


結婚うんぬんはまぁ…子供の戯れというか。

けれど、嬉しかった。

結婚はできないけど、ずっと一緒だと言ってくれたことが。


「まーくん……」


幼少期のあだ名をぽつりと呟いてみる。

その響きは懐かしくて、なんだかちょっぴり恥ずかしかった。



「懐かしい呼び方してるじゃねーか」

「!?」


ビクッと幸村の体が大きく揺れる。


「…っ。政宗、急に入ってこないでくだされ」

「良いじゃねぇか。それより、まーくんってもう一度呼んでみな」

「嫌でござる」

「なんでだ」

「だって、恥ずかしいでござろう」


“くん”やら“ちゃん”が付いたあだ名で呼び合う年ではもうない。


「良いじゃねーか。俺は未だに“ゆき”だぜ?」

「それは、まぁ……確かにそうでござるが」

「俺的にはお前の口調のが恥ずかしい」


ござるとか、いつの時代の人間だ。

祖父の影響だというのはわかっていたが、ちょっとからかってやった。


「な、んと!…そう、でござるか……」


幸村はしょぼんと目に見えるほど落ち込んだ。




 
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