幸村様と十勇士

□幸村様と十勇士I
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からりと晴れた空。


雲や風の状態から、どうやら雨の心配はなさそうだ。


しばらくボケ〜と空を眺めていれば、スッと影が掛かった。




「……佐助?」


「よっ!甚八、元気?」


「……うん」




小さく頷き、根津甚八はゆるゆると佐助に視線を移した。



「なにか……用?」



だいたいの用件はわかっているのだが、あえて聞く。


すると佐助は背中に括り付けていた風呂敷を甚八に手渡す。


中には朱色の着物が一着と、濃紺の袴が包まれていた。


その着物たちは糸がほつれていたり、布が破けていたりしている。



「今回はこれだけ?」



いつもなら少なくとも三着ほどは包まれているから、これは珍しい。




「うん、そう。旦那ってば最近おとなしいんだ」


「そうか……」




あの落ち着きのない主がおとなしいなんて、いつもなら具合が悪いのかと疑ってしまう。


しかし、最近では何となく理由がわかるので、とくに何も心配はいらない。


別の意味での心配ができてしまってはいるが。


それは佐助や清海、鎌之助辺りがいれば安心だ。





「長(仮)死ねぇぇ!」


「うおっ!? 危ねっ!鎌之助、ここまで追ってきたわけ?!」



訂正しよう。



鎌之助は不安の一環だ。

いや、確実に。



鋭い殺気を隠しもせず、鎌之助は佐助へと鎖鎌を繰り出す。


佐助は当たるか当たらないかの最小限の動きで躱していく。


ガリガリ、と何かが削れる音がして、甚八はため息をついた。




「……どうでもいいけど、船は壊さないでくれ」







 

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