幸村様と十勇士
□幸村様と十勇士K
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望月帰還から三日後。
幸村の兄である真田信幸が上田を訪れた。
「兄上!」
到着するや否や、幸村は信幸の胸に飛び込んだ。
久方振りの再開が嬉しいのだろう。
信幸は飛び込んできた幸村をしっかり受け止め、久しぶりと微笑んだ。
幸村も、お久しぶりですと嬉しそうに笑う。
幸村に尻尾があったなら、はち切れんばかりに振っているに違いない。
「大事ないかい?」
「はい!毎日平和に過ごしておりまする」
「それはよかった」
柔らかな髪を優しく撫でる。
気持ちよさそうに瞳を閉じて、幸村はされるがまま。
もっとというように身体を密着させた。
まるで童のような仕草をする幸村に、信幸はくすくすと笑う。
「幸は相変わらずようだね」
その言葉にムッとして、頬をプクリと膨らませる。
「兄上はいつまでも童扱いでございます」
某も成長したのですぞ、とその場でくるりと一回転。
尻尾のように伸びた後ろ髪が、ふわりと舞った。
そういうところが相変わらずだということに気付いていないようだ。
「旦那、門の前で信幸様を引き止めてないで、早く上がっていただいたら?」
感動の再会の邪魔をしないように今まで黙っていた佐助だったが、さすがに口を挟んだ。
いつまでも門の前で立たせておくわけにはいかない。
「そうでござった!兄上、大変申し訳ございませぬ」
「大丈夫だ」
そう言って、シュンとなってしまった幸村の頭を撫でる。
本当にいつまで経っても子供のままだ。