幸村様と十勇士
□幸村君と十勇士
1ページ/2ページ
初めて目にした時の驚きは今でも鮮明に思い出せる。
くりくりとした大きな目。
ふわふわと柔らかそうな茶色の髪を後ろだけ長くし、赤い紐で束ねている。
笑顔はまるで花が咲くかのように可憐で。
一目惚れだった。
こんなにも可愛い子がいるなんて。
「まずはお友達から始めてくれませんか!?」
あまりの感動に、思わずそう口走っていた。
気になるあの子は剣道部に所属している一年生。
性格は明るくて、誰にでも好かれるタイプ。
恋愛は超がつくほど苦手で、初なうえに鈍感。
これが、ここ数日あの子を観察して得た情報だ。
「おい、佐助。顔がとんでもないことになっている」
前の席の才蔵が振り返ってそう言った。
どうやら顔がにやけていたらしく、気持ち悪いと悪態をついてくる。
「仕方ないでしょ。旦那のことを考えるとこう、胸がギュウッとなるの!」
「キモイ死ね」
「酷いっ!才蔵だって一目見たら絶対に惚れるって!」
惚れたら惚れたで、それは困りますが。
内心でそう思いつつ、佐助はふと窓から校庭を見下ろした。