幸村様と十勇士

□幸村様と十勇士J
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町の入口付近にて、一人の旅人が山賊に囲まれていた。



「だーかーら!謝ってるじゃんかー。腹へってたんだよ」



沢山あったんだからちょっとくらいいいだろ。


ケチだなー、と山賊相手に唇を尖らせる。



「謝ってすむか!見たところいいところの出みたいだし、身包みぜんぶ置いてきな」


「はぁ?何で飯くらいで脱ぐ必要がある。お断りだ」


「なんだとコラ!野郎共、やっちまえ!!」


「あらら……面倒くせぇ」



その言葉とは裏腹に、実に楽しそうに旅人は言う。


そして、腰に差していた刀を抜くと、目にも留まらぬ早さで山賊たちを倒していった。






「弱いなぁ……」



地面に転がる山賊たちを一瞥して呟く。


一応、峰打ちにしたので死んではいない。


死んではいないが、しばらくは動けないだろう。


道の真ん中に転がしてたら邪魔だよなぁと思いつつも、動かすのは面倒だ。


憂さ晴らしに踏み潰して歩いてやってくれ。



「さぁ〜てと、さっさと帰らないとなぁ……」


「そこの御仁、大丈夫でござるか!?」


「ん?」



頭上から声がする。


見上げれば、一羽の鳥に掴まって空を飛ぶ二人の男がいた。


その姿には見覚えがある。



 
「おー、姫にさっちゃん!久しぶりだなー!」


「…………」


「…………もっちー?」



自分たちに対するへんてこな呼び名に固まってしまったが、こんな呼び方する人物は一人しかいない。


佐助が該当する人物の名を呼べば、旅人はおう!と笑って返事をした。



「もっちー……望月か!」



ピンポーン!と嬉しそうにもっちーこと望月六郎が被っていた笠を取った。



「久しぶりですね、姫。いや、相変わらずな感じで」


「うむ!望月も元気そうでなによりだ」


「感動の再会を邪魔して悪いけど、そのゴミどうすんの?」



それ、と佐助が望月の足元に転がっている山賊たちを指差す。


「またやったのか?」



周りに転がっている男たちを見て、幸村が苦笑する。



「腹がへってて」


「また無駄遣いでしょ」



やれやれ、と佐助はため息をついた。


望月は路銀をすぐに消費してしまう癖がある。


そのため任務の後半はいつも無一文の状態だ。



「そんな顔すんなよー。お土産買ってきたんだから」


「え、本当?」


「うん、ほんとほんと」



お土産という単語に佐助がピクリと反応する。


本当にタダとかお得とかそんな単語が好きな奴だ。





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