幼なじみと×××

□幼なじみは優しい子
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数十分後、幸村は戻ってきた。



「よぅ、幸、お帰り」


声を掛けると、幸村は慌てて顔を俯かせた。

その行動を不審に思い、政宗はペンを置いて、幸村の下へと行く。


「幸、どうした?」

「やっ!」


ヒョイッと顔を覗き込もうとしたら、ベシリと頭を叩かれた。


「いてっ!何すんだ!」


怒った!と政宗は幸村の両頬を手で掴み、無理矢理に顔を上げさせた。


そして、ハッとする。
幸村の大きな瞳いっぱいに涙が溜まっていた。


「な、な……幸、どうした?虐められたのか?」

「ちがう…転んだ……」


涙を堪えて呟く幸村の姿を見る限り、転んだ形跡はなかった。


「嘘だろ」

「うそじゃないもん」

「う・そ・だ!だって怪我してねーし」

「治ったの!」

「そんな訳ないだろ!」


本当のことを言わない幸村に苛立ちを覚える。自然と口調が荒くなった。

頑なに、何をそんなに隠すのだろう。


「俺には言えないって言うのかよ……」


自分で言って、なんだかとても悲しくなった。

幸村に拒絶されるのは、何よりも辛い。


「ちがう!ちがうもん!だって、言ったら、泣いちゃうでござる」

「ゆき、が?」

「まーくんがでござる」

「俺が?」


なんで?と問い掛ける。
幸村はギュッと唇を噛んで、俯いた。


「泣かないから、言ってくれ。幸に隠し事されてる方がつらい」


わざと泣きそうな口調でそう言えば、幸村は慌てて口を開いた。


「……まーくんと、一緒に遊んだらダメって、言われ、て……」

「うん」

「一緒にいた…ら、病気がうつるからって……それで、ムカついて」

「うん…」

「殴ったでござる」

「……そっか」


幸村の優しさに、涙が出そうになった。

もう慣れてしまった非難の声。

それに、幸村は怒ってくれた。
悔しいと泣いてくれた。自分の代わりに。


「う、う……ごめんなさいでござる」

「……なんで、幸が謝るんだよ」

「だって、まーくん泣いてるでござるから」

「これは、いいんだ」



嬉し泣きだから。

そう言って、ギュッと幸村の体を抱きしめた。


とても温かい。

まるで、幸村の心みたいだと思った。



END


 
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