幸村様と十勇士
□幸村様と十勇士A
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才蔵の話によればこうだ。
伊三の作った怪しげな薬が混入した団子を始末しようとしていたのだが、腹を空かせた主が静止の言葉をかける間もなく口に運んでしまった。
何と単純で馬鹿な話か。
忍の持っているものを疑いもせずに口にするなんて。
一瞬情けなくなったが、そこが幸村の良いところでもある。
偽りのない信頼を持って接してくれているのだ。
そんな態度が十勇士たちを温かな気持ちにさせてくれる。
心地好い、我が主。
そんな気持ちを抱いてしまっては、忍としては失格なのだろうけれど。
「まぁ、事情はわかったけど……これ戻るの?」
チラリと幼くなった主を横目で伺う。
幸村は昔に着ていた緋色の着物と黒の袴を身につけていた。
小さな主がちょこちょこと身動きをとる度に、後ろ毛がゆらりと揺れる。
「……さすけ」
「ん?なに、旦那?」
「こちらをみすぎだぞ!」
突き刺さるような視線が心地悪かったらしい。
舌ったらずな声でそう言い、じとりと幸村……もとい弁丸は見上げるように佐助を睨む。
そんな可愛らしい顔で見上げられると、何だか越えてはいけない一線を越えてしまいそうだと佐助は思った。