幸村様と十勇士
□幸村様と十勇士C
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「…………長」
「ん、なに?小助?」
「なぜ幸村様のお姿になる必要があるんですか」
今の小助の姿と声は幸村で、佐助と才蔵も幸村の姿に変化していた。
「なぜって、旦那はお呼ばれしたの。同時に三国から」
嫌な予感がする。
続きが聞きたくない。
そんな小助の今の心境を知らぬ佐助は「だからね」と幸村の姿で微笑んで続けた。
「本人に行かせるのって癪だからさ、俺様たちが情報収集も兼ねて潜入しようという結論に至りました……と」
確かに本人に行かせるのは癪……というより危ないから賛成だが、無茶があるような。
そんな心情を悟ったか、佐助は大丈夫!と親指を立てた。
いや、全然大丈夫じゃない。
思わず半眼で佐助を見つめてしまった。
「仕方ないでしょ!適任がいないんだよ。旦那の影武者なら頑張ってよ」
無茶苦茶な。
影武者の仕事は別に問題ないのだが、あの三人の国に潜伏……ではなく、国主に対面しに行くのは躊躇う。
正直なところ苦手なのだ。
伊達、毛利、長曽我部の順に会いたくない。
毛利は怖いし、長曽我部はやたらベタベタしてくるし、伊達はなんかもうわからないがとにかく苦手だ。
しかし腹を括らねば。
ここで駄々をこねたところで状況は変わらない。
長が笑っているうちに良い返事をしなければ。
「…………長曽我部で……お願いします……」
半ば諦め気味に言った。