幸村様と十勇士

□幸村様と十勇士D
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「んわっ……ぷ!!」


「お?」



ドスンと胸に何かが当たる。


見れば、稽古着姿の幸村がそこにいた。


顔面を胸に打ち付けたようで、鼻が赤くなっている。



「すみません、若。怪我はないですかい?」


「鼻を打った……」


「赤くなってますな。一応、冷やしときましょう」


「いや、大丈夫だ。それより清海はどこへ行くのだ?」


「へ?どこって任務に決まってるでしょう」



なに当たり前のこと言っているんですかと笑えば、幸村が首を傾げた。



「今回の任務は某も同行すると言っておいたであろう?」


「えぇ、はいはい。分かってますって…………えぇぇ!?」



いつそんな話になったのか。


清海には全く覚えがない。


こりゃ、ますますヤバイな自分の物忘れ。


やはり年なのだろうか。



「忘れたのか」


「いえ、はぁ……申し訳ない。全く記憶にありません」


「むぅ……まぁ、いい。支度ができたなら出るか」


「構いませんが、若はそのまま出るんですかい?」



そう指摘され、幸村は己の格好を見た。


幸村の格好はいつもの戦装束ではなく、稽古着姿。


忘れていたらしい。


顔を赤くして、バツが悪そうに笑った。



「着替えてくる」


「外で待ってますよ」



うむと一つ頷き、幸村は慌ただしく自室に戻って行った。



「若はそそっかしいな」



くすりと笑みを漏らし、清海はすたすたと門へ向かった。






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