幸村様と十勇士

□幸村様と十勇士E
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引きずるほどに長い着物を身に纏い、扇を開き、閉じる。



「いち、に、いち、に…………旦那、やる気ある?」



長い着物の裾に絡まる幸村に佐助がそう声を掛けた。



「やる気はあっても、こんなの無理でござる!」


「無理でもやらないと。お館様のためでしょ?」



それを言われてしまえば、幸村はグッと言葉を飲み込むほかなくなってしまった。


そう、これはお館様のため。


普通ならば断るはずの舞手を承諾してしまったのは、お館様が望まれたことだからだ。


酒の席の戯言だとしても、お館様が幸村の舞を見たいと言ったのだから。



「しかし、なぜ女役……」


「うってつけでしょ」



さらりと佐助が答える。


童顔で線が細くて、髪が長いのだから、絶対に女役だ。


何より俺様が見たいし。


下心ありありの佐助である。



「まこと動きにくい」



本番用はもっとジャラジャラと装飾が付いていたので、こちらはまだ軽い方だ。


しかし、普段が軽装すぎるほどの軽装なので、幸村には重たく感じるらしい。






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