幸村様と十勇士
□幸村様と十勇士G
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「ふぅ……」
「珍しいですね、信幸様がため息をつかれるなんて」
「……佐助か」
どこからともなく聞こえてきた声の主の名を呟くと、音もなく一人の忍が現れた。
忍にしてはやや派手な風貌をしてはいるが、佐助は忍隊の隊長であり、腕は立つ。
また幸村の側近も務めている。
「五日後の戦のことでちょっとね」
信幸がそう口にすれば、佐助はすぐに話の内容を理解したようで、成る程と頷いてから小さく苦笑した。
「弁ま……幸村様のことですよね?」
“弁丸”と幼名で呼びかけて、慌てて訂正する。
もう“弁丸”ではないのだ。
「うん。戦場で転んだりしないだろうか……」
さすがにそれはと言いかけて、完全に否定はできないことに気付く。
幸村はどこか抜けているところがあり、兄の信幸がしっかりしているからだろうか、それが際立って見える。
「否定できないですねー」
「ふふ。だろう?私もその戦に出るが、終始一緒にはいられない。故に、佐助」
「はい」
「弟を……幸村を頼む」
「勿論ですよ」
だって側近ですし。
佐助は軽やかに笑って言う。
その笑みに釣られて、信幸もくすくすと笑った。
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兄上も、やっぱり幸村のことが心配で仕方ない。