senri×kura

□告白
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「宜しく頼むばい。」

笑顔で握手を求められた。
俺は驚いて言葉が出なかった。

『……。』

彼の身長に驚いたのもある。
だってかなり長身だから。
でも……―――

「部長さん?」

一目惚れをした瞬間だった。

『あ…あ、堪忍ね。ボーッとしてて…』

こんな大男からこんなにも無邪気な笑顔がでるなんて…

『………反則やろ…』

「ん?なんか言ったとね?よう聞こえんかったばい…」

やばっ!心の声がもれとった!
あ、そういえば握手…。
もちろんだが彼の手は既に引っ込められていた。

―――したかったんやけどなぁ…

『いや…なんでもないわ』

俺は気持ちを誤魔化すように必死に笑った。

「そ?じゃ、宜しく」

そう言ってどこかに歩いていってしまった。

『…あかん……目ぇ見れへん…//』

確実に一目惚れ。
人生初の一目惚れ。
相手は急に現れた熊本弁の千歳千里……。





『おいそこ!何やっとんねん!イチャつくんやったら家でしろアホ!』

『またおらんし!千歳と金ちゃんはどこいったねん?!』

『ユウジと小春も真面目に練習しぃや!ラブルスやるんやろ?←』

毎日毎日疲れるわ…。
光と謙也は毎日のようにイチャつきおるし
千歳は練習こんし
金ちゃんはどっかいってまうし
ユウジと小春もおかしなことやるしで。

おかしやろ!四天男子テニス部おかしいやろ!
いや、俺はおかしくないけどな?!


どないして変えてけばエエんや…


「白石?どぎゃんしたと?」

テニスコートの裏からノコノコと顔を出したのはあの千歳千里だった。

『やっときた!さっさと練習せぇ!』

実はまだ千歳の練習する姿を見たことがない。
まぁ学校に来てないんだから当然か。


「練習すると?どげんこつ?」

どげんこつって…
練習をしらないのか?!
アホやろ…。

『千歳…。お前は壁打ちでもやってろ。』

最初の練習は壁打ちで十分やろ…
てか…練習なしで九州二翼いわれとったんかぃ…。

心の中でツッコミをいれてみた。

「壁打ち?」

千歳はなんだそれ、という表情を浮かべた。
ほんっっっっまアホかい。

「白石が手本見せるならやるばい」

そう笑顔で言われたら断りようがない。

『しゃーないなぁ…少しだけやで?』

自分の練習時間を削ることになるから
千歳に教えつつ自分も練習を無駄なくこなさないといけない。

『…無駄のないテニスや……』

俺はボソッと呟いた。


「で、どぎゃんすると?」

部室の壁の前に来た。

『えーと。先ずは…』

説明しようとしたら千歳が壁打ちを始めた。
なんや、できるやん。

『って、は?!出来とるやん!』

とうとう口に出してツッコミをいれてしまった。

「これが壁打ちとね?暇やね」

暇…。
無駄あるわ……。

『そんな無駄なフォームで全国は行けへんで!』

そう言って俺も壁打ちを始める。
無駄のない最高のフォームで。

『んんーっ!エクスタシー!』





……………あ。
やってもーた。


「……。」
『……。』


2人の間に沈黙が浮かぶ。

『…あ……ち、千歳?』

俺は必死に誤魔化そうとした。


……が。

「白石、綺麗やったばい…」

そう言ってこっちを見ている。
なんか分からんけど…誤魔化せたん?
まぁ結果オーライや!

『…そ、そーか?おおきに』

まぁ取り敢えず礼を言い笑った。

「むぞらしかね」

千歳は熊本弁でなにかを言った。

『む、むぞらしか?』

俺は関西人やしもちろん意味が分からない。

「何でもないばい、さ、ミーティングの時間とよ?」

そういってボールを片付け始める千歳。
部室の窓から覗く時計を見ると部活終了の時間を廻っていた。

『せやな、急がな…』

納得はしなかったが取り敢えず今は。

俺等はボールを片付け部室に戻り着替えを済ませ各自帰宅した。

『むぞらしか…か……。』

俺は帰り道に呟いてみた。
この意味を知ったのはもう少し後だった。


end

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