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□1.濡れた頬に、
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1.濡れた頬に、





愛しい、愛しい君。
なんで泣いているの?

君は僕だけを思って泣けばいいのに。









「おやすみ、馨」

「おやすみ、光」
そういって君は静かに笑うんだ。
今にも消えて行ってしまいそうな程に。

僕は知ってる。
馨が毎晩、僕が寝た頃に泣いていると言うことを。

最初は気づかなかった。

でもある日、ふと目が覚めた。
馨の顔でも見ようかと起き上がろうとした時だった。

「……っ…ひっく……ぅう…」

聞いてしまった。
馨が泣いているのを。


ねぇ。
なんで泣いてるの?

僕には言えないこと?


ねぇ、………馨……



今日もきっと泣くだろう。僕が寝たのを見計らって。

また、今日も。

「…っぅ、…かるっ……ひ、かる……っ…」


なんだ。
君は僕のことを想って泣いていたのか。
なんて優越感。


そっと、起き上がり馨を見る。
馨は泣いていたのを隠すためにゴシゴシと、拭う。
「馨」

「…ど、したの…ひかるが起きる、なんて…めずらしい、ね」

馨の濡れた頬に優しく触れる。









(君の濡れた頬に、触れる)(ご褒美に甘い、甘いキスをしよう)

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