鬼徹

□髪に花を。
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「あの、鬼灯様。どうなされたのですか?桃源郷に長居するなんて珍しい…」

仕事でやって来た鬼灯様。
いつもなら白澤様を嫌う為すぐに帰られるのだけれど、今日は何故か連れ出されました。
いや、強制ではないのでいいのですが。

きちんと白澤様に許可も頂きましたし。
え?それこそ珍しい?やだなぁ、白澤様に許可を貰う行為こそ強制ですよ。

今更ながら天国は自然が多い。
極楽満月の周辺は薬草が多いですし、野宿も普通に出来る程住み心地が良い。

「え、あの、鬼灯様…?せめて何か仰ってください」
「静かに木陰で座って休んでいてください」
「あ、はい…」

流石に鬼灯様に口答えは出来ません。なんせ、閻魔様の補佐官なのですから。
口答えしたらどうなることか。

私は言われた通りに木陰へと移動する。
鬼灯様はというと、花畑の中に一人ポツンと佇んでいらっしゃる。
素晴らしく、似合わない。

何を考えているのか全く読めませんがぼーっと空を眺める。
あぁ、綺麗な青空。程よい心地良い風。
こういう場所でぼーっとしていたら眠気に襲われてしまいます。

ーー少し意識を失っていました。
早く言えば居眠りしていました。鬼灯様を放って……放って…?
花畑の中に佇んでいた鬼灯様は今私の目の前にいます。

「鬼灯様…?」
「やはり、貴女には花が似合う」
「え、花?…あ、」

鬼灯様の言葉に右耳辺りに違和感を覚えた私はそこに触れた。
何かに触れ、その何かを手に取る。

「これは…蓮?」
「ええ。本当は花の冠でも作って差し上げたかったのですが、冠に向いている花がこの辺りには見当たらなかったので。綺麗な蓮の花を見つけたのでそれを、と」

私の手から蓮の花を取り上げ、再び私の右耳辺りに飾られる。
その時の鬼灯様の表情はとても満足気で。
優しく微笑んでいるではありませんか。
多少驚きました。基本無表情の鬼灯様がこんな時に微笑まれるなど。

「それは私からのプレゼントです。今はそんな物しか渡せませんが、今度はもっといい物をプレゼントさせてください」
「え、そんないいですよ!これだけでも十分」
「そんなこと言わずに」

言葉を遮られました。
間近でそんなこと言われると断るに断れない。
わかりました、と一言伝えるとまたも満足気で。
まぁ、鬼灯様が満足なさってくれるのならいいか。

「時間を取らせてしまいすみません。紅音さんには白澤さんの監視という仕事もあるのに」
「あ、大丈夫です。今日は桃太郎さんもいらっしゃいましたし。流石に1人にするのは不安で仕方ありませんが」
「それもそうですね」

他愛もない会話をしながら鬼灯様は私を極楽満月まで送ってくれまして。更には最後に白澤様に金棒を投げつけて帰られました。

白澤様はもちろんのこと、私も桃太郎さんも何故鬼灯様が金棒を投げつけたのかは分かっておりません。
ですが、ざまあみろ、白澤様。



fin.

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